きらいになれない害虫図鑑(有吉立)

アース製薬の「生き物係」として、いわゆる「害虫」と呼ばれる小さな生き物たちを飼育する苦心談。虫さんたちと、触覚のあるかわいい女性が並ぶ非常にチャーミングな表紙が印象的な本です。

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著者の有吉立(なんて読むのだろう、このお名前)さんは、生物学者でも生物学を専攻した方でもなく、もともとは絵描きさんでした。しかも虫好きというワケでもない。採用面接の際に、「害虫を飼育する仕事」とわかっていたのに、入社後に60万匹のワモンゴキブリが放し飼いされている部屋の掃除は辛かったようです。
それでも「仕事だから」と自分に言いきかせて働く姿勢には頭が下がると同時に、希有な胆力であると見上げざるをえません。その後も、さまざまに工夫をこらしながら一所懸命に害虫の世話をして快適に繁殖できる環境を整える筆者は、実にまじめで誠実そのもの。

そして研究員から要求があれば、必要なだけの虫を渡すというビジネスライクさも重要な資質です。こういう点では元来の虫好きでない方が向いているのかも。ゴキブリに愛着がわいて、研究員に渡すのを拒むようではこの仕事はできません。言うまでもなく、研究員は殺虫剤(アース製薬内の用語では「虫ケア用品」)を作っているんですからね。その手に渡った虫たちの運命はいうまでもありません。

害虫(という言葉は近年の生物学では使わないようです。人間の都合だけで「害」だの「益」だのというのはナンセンスだ、ということでしょう)と聞くと、頼みもしないのに勝手に発生してどんどん増えていく迷惑な生き物、という印象があります。しかし、いざ繁殖させようと思ったり、常に一定数を保とうとするとなかなか大変でうまくいかないらしい。
「嫌だな」と思うから、一匹でも多すぎるように感じるだけですね。害虫だって生き物、それなりの条件がないと育ちません。

とは言い条、簡単に増えるものもいるのもまた事実。何が増えやすくて何が増えにくいのかは本書を読んでのお楽しみ、ということで。


この記事へのコメント

2019年07月15日 19:26
めざら さん>>
コメントありがとうございます。
「りつ」さんですか。女性ですから、一般的には「律」でしょうか。
お名前のとおり、ちょっとひと味違う個性の素敵な女性みたいですね。